ずさんな勤怠管理はどのようなリスクを招くか?勤務管理の整備方法も解説

勤怠管理は、従業員の労働時間を正確に把握し、適切な労働環境を維持するために不可欠な業務です。
しかし、その管理が不十分である場合、企業は予期せぬ多くのリスクに直面する可能性があります。
法令遵守の観点はもちろんのこと、従業員の権利保護や企業としての信頼性維持の観点からも、勤怠管理の重要性は年々高まっています。
本稿では、勤怠管理のずさんさが招く具体的なリスクと、それらを回避するために求められる整備の方向性について解説します。

勤怠管理のずさんさはどのようなリスクを招くか

法令違反による罰則

勤怠管理がずさんな場合、労働基準法や関連法令に違反するリスクが高まります。
労働基準法では、法定労働時間は原則として1日8時間、週40時間と定められていますが、この時間を超えて労働させること自体が直ちに違法となるわけではありません。
時間外労働を行わせるためには、いわゆる36協定の締結・届出が必要であり、さらに時間外労働には上限規制が設けられています。これらの手続きを経ずに時間外労働を行わせた場合や、上限規制を超過した場合には、労働基準監督署による是正指導や勧告の対象となります。

悪質なケースでは送検に至り、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金といった罰則が科される可能性もあります。
また、労働時間の把握・記録が適正に行われていない場合も、長時間労働の実態を把握できない状態として行政指導の対象となり得ます。
勤怠記録の不備は、それ自体が重大なコンプライアンス上の問題となり得る点に注意が必要です。

未払い残業代の支払い命令

労働時間を正確に把握できていない場合、未払い残業代が発生するリスクが高まります。
実労働時間と申告時間に乖離が生じていた場合、企業は割増賃金の追加支払いを求められる可能性があります。
近年は、賃金請求権の消滅時効が法律上5年へ延長されています。もっとも、当分の間は3年とする経過措置が設けられているものの、複数年にわたる未払い賃金を請求されるリスクがある点に変わりはありません。
厚生労働省が公表する監督指導結果においても、多くの企業で賃金不払残業の是正が行われ、多額の割増賃金の支払いが発生している実態が示されています。勤怠管理の不備は、過去に遡った大きな金銭負担へ直結し得る問題といえるでしょう。

従業員からの訴訟

未払い残業代の問題が深刻化した場合、従業員から訴訟を提起されるリスクもあります。
また、長時間労働の継続によって健康被害が生じた場合や、適切な休暇取得が妨げられていた場合には、安全配慮義務違反などを理由とした損害賠償請求に発展する可能性も否定できません。
いわゆる固定残業代(みなし残業)制度を導入している場合であっても、設定された時間を超えて労働した分については、追加の割増賃金支払いが必要となります。勤怠記録の不備や労働時間の把握不足は、賃金計算の誤りを招き、結果として紛争や訴訟のリスクを高める要因となります。

ずさんな勤怠管理が招くその他の問題点

企業イメージの低下

労働関連法令違反や未払い残業代問題が表面化し、従業員との紛争や訴訟が報道された場合、企業の社会的信用は大きく低下します。
いわゆる「ブラック企業」との評価が定着すれば、取引先からの信頼低下のみならず、採用活動にも深刻な影響が及びます。優秀な人材の確保が困難となり、結果として企業競争力の低下を招くおそれがあります。
一度毀損した企業イメージの回復には長い時間と多大なコストを要するため、予防的な管理体制の構築が極めて重要です。

不正や長時間労働の隠蔽

勤怠管理が形骸化している職場では、遅刻や早退の未申告、無断欠勤、打刻の不正操作、中抜け時間の水増しなどの不正行為が見過ごされやすくなります。管理が行き届いていないという認識は、さらなる不正の誘発要因にもなり得ます。
また、長時間労働の実態を客観的に把握できない場合、過重労働への対策が遅れ、従業員の健康障害やメンタル不調を招くリスクも高まります。結果として生産性の低下や離職率の上昇といった経営上の損失にもつながりかねません。

ハラスメントの温床化

勤怠管理が不十分な組織では、労務コンプライアンス全体への意識も希薄になりがちです。
その結果、上司による過度な残業の強要、休日出勤の半ば強制的な指示、休憩時間の不取得といった問題行為が常態化する可能性があります。
勤怠管理は単なる労働時間の記録業務ではなく、適正な労務管理と健全な職場秩序を維持するための基盤であり、その機能不全はハラスメント発生リスクの増大にも直結します。

リスクを避けるための勤怠管理の整備とは

客観的記録の徹底

適正な勤怠管理を実現するためには、自己申告のみに依存しない客観的記録の整備が不可欠です。
始業・終業時刻の把握については、タイムカード、ICカード、PCログ、入退館記録など、使用者が確認可能な客観的データを基礎として記録することが求められます。
自己申告制を採用する場合であっても、その正確性を担保する実態調査や、適正申告を妨げない運用体制の整備が必要です。
なお、賃金台帳などの労務関連書類には保存義務があり、保存期間は原則5年(当分の間3年)とされています。記録保存の不備は、紛争時に企業側の不利を招く要因となります。

勤怠管理システムの導入

ずさんな勤怠管理を防止し、正確かつ効率的な管理体制を構築するためには、勤怠管理システムの導入が有効です。
システム化により、労働時間、休憩時間、残業時間の記録・集計が自動化され、手作業による集計ミスや計算誤りを大幅に削減できます。
さらに、給与計算システムとの連携によって割増賃金の算定精度が高まり、法令遵守体制の強化にもつながります。
不正打刻防止機能や、法改正へのアップデート対応を備えたシステムも多く、内部統制の観点からも導入メリットは大きいといえるでしょう。

まとめ

ずさんな勤怠管理は、法令違反による罰則、未払い残業代の遡及支払い、従業員からの訴訟といった法的リスクにとどまらず、企業イメージの低下、不正行為の温床化、ハラスメント発生リスクの増大など、多方面に深刻な影響を及ぼします。
これらのリスクを回避するためには、客観的記録に基づく労働時間把握を徹底し、保存義務を含めた記録管理体制を整備することが不可欠です。加えて、勤怠管理システムの導入による運用の高度化も有効な対策となります。
適正な勤怠管理体制の構築は、法令遵守のみならず、企業と従業員双方の信頼関係を支える基盤であり、持続的な組織運営を実現するための重要な経営課題といえるでしょう。

セミナー開催のお知らせ

2020年4月1日(金)に「中小企業経営者のための攻めの働き方改革セミナー」を開催します。

セミナー詳細情報