社員トラブル発生時の初動対応と人事処遇、会社が取るべき対応とは

社員が逮捕されるという事態は、企業にとって突然発生する重大なトラブルのひとつです。
実際には、逮捕の連絡を受けた段階では事件の詳細が十分にわからないことも多く、会社としては感情的に判断せず、事実確認と法的リスクの整理を優先する必要があります。
初動対応を誤ると、社内混乱だけでなく、不適切な人事処分による労務トラブルにつながる可能性もあります。
今回は、社員が逮捕された場合に会社が取るべき基本対応について解説します。

社員逮捕時の会社初動対応

事実関係を正確に把握

従業員が逮捕されたとの連絡を受けた場合、まず確認すべきなのは、逮捕の事実と事件の概要です。
どのような容疑で逮捕されたのか、業務中の出来事なのか私生活上の出来事なのかによって、会社の対応は大きく異なります。
業務中の行為による事故や不法行為であれば、会社が使用者責任を問われる可能性もあるため、被害状況や取引先への影響も含めて確認が必要です。

一方で、逮捕はあくまで捜査手続の一段階であり、有罪が確定したことを意味するものではありません。報道や第三者の情報だけで判断せず、可能な範囲で本人や家族、弁護士などから情報を確認することが重要です。

社内業務への影響確認

逮捕された従業員は、少なくとも身柄拘束中は出社できません。
日本の刑事手続では、逮捕後、検察官送致まで含めて最大72時間以内に勾留請求が行われるか判断され、その後勾留が認められればさらに身柄拘束が続くことがあります。
担当業務の引継ぎが必要な場合は、代替担当者の確保や取引先対応を早急に進める必要があります。

ただし、留置中の本人との面会は制限されることがあり、会社関係者が自由に接触できるとは限らないため、必要に応じて警察署や弁護人を通じて確認します。

弁護士への相談検討

社員逮捕時は、会社独自で判断せず、早い段階で弁護士へ相談することが望まれます。
特に懲戒処分、報道対応、取引先説明、社内公表の要否などは法的判断が必要になる場面が多くあります。
顧問弁護士がいる場合でも、会社側の利益保護と本人の刑事弁護は役割が異なるため、通常は会社側と本人側で別の弁護士が対応することが一般的です。

逮捕された社員の人事処遇

勤怠賃金の取り扱い決定

逮捕・勾留によって出社できない期間は、原則として労務提供がないため賃金は発生しません。
これは一般に「ノーワーク・ノーペイ」の考え方によるものです。
ただし、就業規則に休職制度がある場合には、その規定に基づいて休職扱いとすることがあります。
年次有給休暇の扱いについては、申請内容や社内運用に応じて個別判断が必要です。

懲戒処分の適否判断

逮捕されたという事実だけで直ちに懲戒処分を行うことは適切ではありません。
重要なのは、会社が把握した事実が就業規則上の懲戒事由に該当するかどうかです。
私生活上の行為であっても、会社の信用を著しく損なう場合や業務に具体的支障が生じる場合には、懲戒対象となることがあります。

一方で、会社との関連が薄く、影響が限定的な場合には、処分の相当性が慎重に判断されます。

退職金支給の検討

犯罪行為が退職理由となった場合でも、退職金を当然に全額不支給とできるわけではありません。
退職金には功労報償的性格もあるため、就業規則の定めと行為の重大性を踏まえて判断する必要があります。
重大な背信行為がある場合には減額や不支給が認められることもありますが、裁判では処分の相当性が厳しく検討されます。

社員トラブル初期対応の注意点

憶測での処分は避ける

逮捕は有罪確定ではありません。
刑事裁判では無罪推定の考え方があり、会社も事実確認が不十分なまま重い処分を行うべきではありません。
後に不起訴や無罪となった場合、不適切な懲戒処分が労務紛争に発展するおそれがあります。

プライベートへの介入は慎重に

私生活上の事件であっても会社への影響があれば対応が必要ですが、必要以上に私生活へ踏み込むことは避けるべきです。
確認すべき範囲は、業務への影響、信用毀損の有無、就業規則との関係に限定して整理することが重要です。

有罪判決前の解雇リスク

有罪判決が確定していなくても、会社が十分な事実確認を行い、就業規則上の懲戒事由が明確であれば処分を検討することは可能です。
ただし、逮捕のみを理由に直ちに懲戒解雇を行うと、後に処分無効と判断されるリスクがあります。
特に懲戒解雇は最も重い処分であるため、会社への具体的影響や証拠の有無を慎重に確認した上で判断する必要があります。

まとめ

社員が逮捕された場合、会社に求められるのは冷静な事実確認と法的整理です。
逮捕直後は情報が限られるため、事件内容、業務影響、本人の状況を確認しながら対応を進める必要があります。
人事処理や懲戒処分は、逮捕の事実だけでなく、就業規則と具体的事実に基づいて判断することが重要です。
判断に迷う場合は、早い段階で弁護士に相談することが、企業リスクを抑える上で有効です。

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