通勤手当の勘定科目とは?税金や役員と個人事業主のケースを解説

日々の経理業務において、従業員への通勤手当の処理はどのように行うべきか、悩む場面もあるでしょう。
給与計算ソフトで自動計算される項目とはいえ、会計上の処理方法や税金との関係、さらには役員や個人事業主の場合の取り扱いについて、正確に把握しておきたいものです。
今回は、通勤手当の勘定科目選択から税務上の扱い、そして適用されるルールまでを解説します。

通勤手当の勘定科目何を選ぶ

福利厚生費給与旅費交通費の選択肢

通勤手当の勘定科目には、法律で定められた特定の科目はなく、一般的には「福利厚生費」「給与手当」、あるいは「旅費交通費」などで処理されます。
福利厚生費は従業員の福利向上を目的とする手当として整理したい場合に用いられ、給与手当は給与明細上の他の手当と一体で管理する場合に適しています。
また、出張旅費や営業交通費とあわせて交通費全体を一元管理したい場合には旅費交通費とする方法も実務上多く見られます。
いずれを選択しても処理自体が誤りとなるものではなく、自社の経理方針や給与計算システムとの整合性、管理体制に応じて選択することが重要です。

継続使用が会計処理の基本

どの勘定科目を選択するにしても重要となるのが継続性の確保です。
一度採用した会計処理の方法は、合理的な理由がない限り安易に変更せず、継続して適用することが求められます。
これにより期間比較が可能となり、財務情報の信頼性が保たれます。
もちろん、管理体制の変更やシステム移行など正当な理由がある場合には変更自体は認められますが、その際は変更理由を明確に説明できるようにしておくことが望ましいでしょう。

管理のしやすさで判断する

勘定科目選択の実務的な判断基準としては、日常業務における管理のしやすさが挙げられます。
給与計算ソフトで他の給与項目とまとめて処理する場合は給与手当、出張旅費や営業交通費と同一管理したい場合は旅費交通費、福利厚生制度の一環として位置づけたい場合は福利厚生費というように、自社の運用フローに最も適した科目を選択することで、経理処理の効率化につながります。

通勤手当の勘定科目と税金の関係

所得税の非課税限度額

通勤手当は一定額まで所得税が非課税とされています。
公共交通機関を利用する場合の非課税限度額は、合理的な運賃等の額を前提として月額15万円までです。
マイカー通勤の場合は片道の通勤距離に応じて非課税限度額が段階的に定められており、令和7年の税制改正により限度額の一部引き上げが行われ、令和7年4月1日以後に支払われるべき通勤手当から適用されています。
なお、令和8年度税制改正大綱では、マイカー通勤者について駐車場等の料金相当額を月5,000円を上限として非課税限度額に加算する見直しが盛り込まれており、法令改正を前提に2026年4月からの適用が見込まれています。
非課税限度額を超えた部分は給与所得として課税対象となります。

消費税は課税仕入れ対象

所得税とは異なり、通勤手当は消費税の取扱い上、課税仕入れに該当します。
これは従業員が負担した電車代やバス代、ガソリン代などに消費税が含まれているためです。
通勤のために通常必要と認められる範囲内の金額であれば、所得税の非課税限度額を超えているかどうかにかかわらず、消費税の課税仕入れとして取り扱われます。
インボイス制度導入後においても、通勤手当については出張旅費等特例の対象となるため、一定事項を記載した帳簿のみの保存により仕入税額控除が認められ、従業員からインボイスの提出を受ける必要はありません。

課税非課税で科目を分ける必要はない

通勤手当について、所得税上の非課税部分と課税部分、あるいは消費税の課税仕入れ区分ごとに勘定科目を分ける必要はありません。
会計処理上は選択した一つの科目で継続処理するのが一般的です。
区分管理が必要な場合には補助科目や摘要欄、税区分設定を活用することで対応でき、実務上もその方法が広く採用されています。

役員個人事業主の通勤手当勘定科目

役員報酬との違い

役員に支給する通勤手当についても、合理的な通勤経路および方法に基づく実費相当額であれば、所得税の非課税限度額の適用対象となります。
法人税上の取扱いについては、役員に対する経済的利益の供与が役員給与として評価される可能性があるため、社内規程に基づき、従業員と同様の基準で算定された合理的な金額を支給し、支給方法や改定の有無について説明可能な形で運用することが重要です。
不相当に高額な場合には損金算入が否認されるリスクもあるため注意が必要です。

個人事業主は自身へ計上不可

個人事業主が自身のために自宅から事業所へ通うための費用は、原則として必要経費に算入することはできません。
これは当該支出が家事費、すなわち生活費の一部とみなされるためです。
ただし、事業遂行上直接必要となる移動費用、たとえば取引先訪問や営業活動に伴う交通費などは必要経費として認められます。
また、雇用している従業員に支給する通勤手当については、事業の必要経費として処理することが可能です。

従業員と同じ非課税枠適用

役員に支給される通勤手当についても、所得税の非課税限度額は従業員と同様に適用されます。
公共交通機関利用の場合は月額15万円、マイカー通勤の場合は通勤距離に応じた限度額までが非課税となります。
この限度額を超える部分は課税対象となるため、適正な金額設定と経理処理を行うことが求められます。

まとめ

通勤手当の勘定科目については、「福利厚生費」「給与手当」「旅費交通費」などの選択肢があり、法令上の固定的な定めはありませんが、一度採用した処理方法は継続適用することが基本となります。
自社の管理体制や実務フローに適した科目を選択することが重要です。
税務上は、所得税について非課税限度額が設けられている一方で、消費税においては通常必要と認められる範囲内の通勤手当が課税仕入れとして扱われます。
役員にも同様の非課税枠は適用されますが、法人税上の役員給与該当性には留意が必要です。
また、個人事業主が自身の通勤費を必要経費に算入できない点にも注意が求められます。
これらの取扱いを正確に理解し、適切な経理処理を行うことが重要です。

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