休業補償と休業手当の違いとは?支給条件や金額の違いを解説

仕事ができなくなった際に、生活を支えるために支給されるお金には、いくつかの種類があります。
「休業手当」と「休業補償」という言葉を聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
これらは似ているようで、支給される原因や条件、そして誰が支払うのかといった点で違いがあります。
いざという時に、ご自身の状況がどちらに該当するのか、あるいは企業としてどのように対応すべきかを理解しておくことは、労働者にとって経営者にとっても非常に重要です。
今回は、休業手当と休業補償について、その基本的な内容から違いまでを解説します。

休業手当とは

休業手当は、労働基準法という国の法律によって定められた、労働者の権利であり、企業が負うべき義務です。
これは、労働者が本来働くべき日に、会社の都合によって休業を余儀なくされた場合に、企業が労働者に対して支払う賃金の一部または全部にあたります。
つまり、労働者の責任ではなく、企業側の都合によって働く機会が失われた際に、その間の生活を保障する目的で定められている制度なのです。

企業都合で休業した場合の賃金

休業手当が支払われるのは、主に会社の経営上の判断や、事業運営上の都合によって労働者が働けなくなった場合です。
具体的には、例えば、会社の業績不振による一時的な操業停止、急な取引先からの大量キャンセルに伴う生産計画の変更、設備の大規模なメンテナンス作業の遅延、あるいは感染症の拡大防止のために事業所を一時的に閉鎖するといったケースが該当します。
また、政治的・経済的な混乱が事業活動に影響を与え、一時的な休業が必要となる場合も含まれます。
なお、地震や台風などの自然災害による休業については、直ちに休業手当の対象となるとは限らず、「不可抗力」と認められる場合には、企業に支払義務が生じないケースもある点に注意が必要です。
これらはすべて、労働者自身の責任ではなく、企業側の都合や事業運営上の問題に起因するものです。

労働契約に基づく支払い

休業手当の支払いは、労働基準法第26条で明確に定められており、企業は労働者を休業させた期間について、平均賃金の3分の2以上の金額を支払う義務があります。
この「平均賃金」とは、通常、休業した日以前の3ヶ月間に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で割って算出される金額を指します。
ただし、この最低基準である平均賃金の3分の2以上という金額は、あくまで法律上の最低ラインであり、個別の労働契約や就業規則、あるいは労働協約などにおいて、これよりも手厚い(例えば平均賃金の8割など)金額が定められている場合もあります。
企業がこの支払義務を怠った場合、法律上の罰則が科されることもあります。

休業補償とは

休業補償は、労働者が業務上の事故や疾病によって就業が困難になった場合に、その回復期間中に生活を支えるために支給される補償金です。
これは、労働者が安心して治療に専念し、心身の回復に集中できる環境を整えるための社会的なセーフティネットであり、職場への円滑な復帰を目指すための一助となる制度でもあります。

業務上の事故や病気で支払われる

休業補償が支給されるのは、仕事中の事故や業務に起因する病状によって休業が必要となった場合です。
具体例としては、建設現場での高所からの墜落事故、運搬中の事故、営業活動中の不慮の事故、あるいは職務に関連するハラスメントが原因で精神疾患を発症した場合などが挙げられます。
また、「業務に起因する病状」としては、過重労働による健康障害、化学物質への曝露による職業病、反復作業による身体への負担、長期間にわたる精神的ストレスによる心身の不調なども含まれます。
なお、通勤途中の事故については労災保険の対象にはなりますが、「休業補償」ではなく「休業給付」として区別されている点に留意が必要です。
これらの場合、労働災害として認定されるためには、その事故や疾病が業務遂行性と業務起因性を持っているかどうかが重要な判断基準となります。

公的保険からの補償

休業補償は、労働者災害補償保険(労災保険)制度に基づいて支給されるほか、業務災害の場合には、休業開始から最初の3日間については事業主が平均賃金の6割を補償する義務があります。
その後、4日目以降については、労災保険から休業補償給付が支給される仕組みとなっています。
これは、労働者が業務上の災害や疾病に遭った際に、経済的な不安なく治療を受け、療養に専念できるような公的な支援を目的としています。
労働者は、定められた手続きを行うことで、この補償を受けることができます。
申請手続きには、事業主の証明や、担当医師による診断書、そして労働基準監督署への届出などが必要となる場合があります。
迅速かつ適切な申請を行うことが、補償を確実に受けるために非常に重要です。

休業手当と休業補償の違い

休業手当と休業補償は、どちらも労働者が働けない期間の収入を補うという共通の目的を持っていますが、その発生原因、適用される法律、そして支給主体といった点で、根本的に異なる性質を持っています。
これらの違いを正確に理解することは、ご自身の状況に応じた適切な補償や手当を受けるために、非常に不可欠です。

支給元と条件の違い

休業手当の支給元は、あくまで「雇用主」である企業であり、企業が雇用契約上の責任として支払うべきものです。
一方、休業補償は、業務上の災害に対する補償として、事業主および労災保険制度の双方が関与する仕組みとなっています。
支給される条件についても、休業手当の場合は「企業都合による休業」、つまり事業主の経営判断や事業運営上の問題に起因する休業が対象となります。
これに対し、休業補償の場合は、「業務上の事故や病気による休業」、すなわち業務遂行性や業務起因性が認められる事故や疾病が原因であることが条件となります。
例えば、工場の生産ライン停止が業績不振によるものであれば休業手当の対象となり、作業中の事故であれば休業補償の対象となる、といった明確な区別があります。

金額や事例の違い

休業手当は、労働基準法により、支払われる金額は「平均賃金の6割以上」と定められています。
しかし、これはあくまで最低基準であり、企業によっては就業規則や労働協約などで、これよりも手厚い保障(例えば平均賃金の8割など)を定めている場合もあります。
例えば、会社都合による休業のケースとして、需要の急激な低下により、一時的に生産ラインを停止せざるを得なくなった工場で、従業員には本来の賃金の一部として平均賃金の6割以上が休業手当として支払われました。
この場合、企業は労働基準法上の義務を果たしたことになります。

一方、休業補償(労災保険における休業補償給付)は、原則として給付基礎日額の6割に相当する額に、休業特別支給金(給付基礎日額の2割相当)が加算され、合計で8割程度の水準となることが一般的です。
この給付基礎日額は平均賃金とは異なる概念であり、算定方法にも違いがある点に留意が必要です。
例えば、業務中の事故で一定期間の療養が必要となった場合には、労災保険からこれらの給付が支給され、療養期間中の生活を支える仕組みとなっています。

まとめ

休業手当と休業補償は、どちらも労働者が働けない期間の生活を支えるための重要な制度ですが、その発生原因、責任主体、そして給付内容において、明確な区別があります。
休業手当は、企業がその事業活動の一環として、経済的な理由や事業運営上の問題で労働者を休業させる場合に、雇用主としての責任で支払うものです。
一方、休業補償は、業務に起因する災害や疾病というリスクに対する補償として、事業主および労災保険制度に基づいて支給されるものです。
労働災害か企業都合かという、休業の原因を特定することが、どちらの制度が適用されるかの決定的な判断基準となります。
労働者一人ひとりが自身の権利を理解し、万が一の際の適切な補償を受けるために、これらの制度の違いを正確に把握しておくことは、極めて重要です。
必要に応じて、社労士といった専門家への相談も、ご自身の状況を正確に把握し、適切な対応を取るための有効な手段となります。

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